2022年3月16日のPRESIDENTオンラインで「なぜ 働かないおじさん を福祉的に再雇用しないといけないのか」というテーマのコラムがありました。
結構、中高年が読むと厳しい内容に感じます。
これは2021年4月に施行された「改正高年齢者雇用安定法」についての内容でした。
そして数年後の「2025年4月から65歳定年義務化」と言う情報や、それは全く違う!との情報があったりしていて、どれが本当なのでしょうか?
しっかり知りたいものですし、今後もどんどん変化していくと思います。
いろいろ調べて行くと2025年からの65歳定年は義務化ではありませんでした。(現時点)
本当に国の施行事項というのは、わかりずらくて混乱しますよね。
目次
そもそも定年とは?
*労働者が一定の年齢(定年年齢)に達すると自動的に雇用制度が終了する制度を「定年制」と言います。
*企業が定年制を導入するには、定年に関する事項を就業規則に明記し、かつその就業規則を労働者に周知させておかなければならない(労働基準法第106条)。
日本の企業の正社員と公務員は、その大部分が定年制を導入している。一方で定年を定めないことも可能である。
(Wikipedia参照)
職業でそれぞれ違う定年制
定年とは企業が定めた定年年齢ですが、面白い事に職業などで全く違うのです。
自衛官やスポーツ選手等は体力的に早めの退職ですし、議員はかなり高齢で特例も公認されています。
スポーツ界などは、それぞれのスポーツで引退年齢が違う印象です。
定年制度と平均寿命の変化
定年制度は平均寿命と密接な関係があります。
企業の定年退職年齢はそれぞれ違いますが多くの企業の退職年齢になります。
*1960年の男性の平均寿命は65.32歳、女性70.19歳(定年退職55歳)
*1970年の男性の平均寿命は69.31歳、女性74.66歳(定年退職55歳)
*1980年の男性の平均寿命は73.35歳、女性78.76歳(定年退職55歳)
平均寿命が毎年上がっていき、時代も変化していきます。
なので、予想した年金額が年々上がっていく事になり、私たちの毎月払いの年金額もどんどん上がっていきました。
同時に少子化問題が浮上して来ます。
*1998年に60歳未満の定年制の禁止が施行されました。(定年退職60歳)
*2012年の男性の平均寿命は79.94歳、女性は86.41歳 (定年退職60歳)
*2013年4月から「改正高齢者雇用安定法」が施行される。(定年退職60歳か65歳か定年なしか選択性)
( 定年退職者の希望者は65歳までの継続雇用制度の導入を企業に義務づけた。)
(Wikipedia参照)
2013年の「改正高齢者雇用安定法」とは、65歳までの雇用確保措置を講じなければならなくなりました。
①65歳までの定年引上げ
②定年制の廃止
③65歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度等)を導入
これらから適用するように義務づけされました。
多くの企業は希望者には再雇用制度を選択して給与等は減額での雇用が多いと考えられますのでほとんどは、60歳の定年退職にしていると推定できます。
参照 厚生省2025年3月31日までの概要
継続雇用制度における経過措置は2025年3月31日をもって終了しますので、4月1日から希望者全員を継続雇用しなければならなくなります。
経過措置とは、新しく別の法律や制度に移行する際に生じる不利益を極力減らすために取られる一時的な措置のこと。
すでに、希望者に対する再雇用制度など実践しているところは今までと変わりません。
特別支給の老齢年金の支給が終わるのに合わせているようです。
2021年・70歳までの就業確保措置が努力義務化になる
「70歳までの就業確保措置」の努力義務化とはなんでしょう?
①70歳までの定年引き上げ
②定年制の廃止
③70歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)の導入
③70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入
④70歳まで継続的に従事できる制度(事業主が自ら実施する社会貢献事業・事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業)の導入
こちらは努力義務なので、雇用確保措置ではなく、就業確保措置となっています。
「70歳までの就業確保措置」の努力義務化は、まだ未対応でも法違反に問われることはありませんが、行政による指導や助言の対象になることはあり得るようです。
正直、60歳過ぎると親の介護や自分自身の健康管理などの問題もあり、70歳までなど業種によっては厳しいイメージです。
70歳まででも余裕で元気な方で、企業に求められるのならお互いに良いですが、なんとなく国の企業任せな感じもします。
もともと、必要な人材なら企業側から「居れるだけいて欲しい」と望まれるものだが企業の人事部は迷惑そうだ。
昨年はサントリーの新浪社長が「45歳定年制」を発言してSNSで炎上したことを思い出しました。
定年年齢の延長の原因は年金なのか?
定年制度の変化は平均寿命と少子化の問題がある事がわかりましたが、一番の原因は年金の問題が大きいのは間違いありません。
二つの年金の歴史
日本でもっとも古い年金は軍人への恩給で1876年に始まり、1904年に鐘紡紡績が企業年金をドイツの企業を参考に始めたとされています。
戦後は1961年の国民年金制度の本格的な発足によって、何度も改正されて1985年には全国民共通で支える基礎年金制度が創設されました。
1961年に導入された時は定年は55歳で男性の平均寿命は65.32歳で女性は70.19歳でした。
55歳から支給されていた厚生年金は主に会社員男性に10年間、そして65歳から国民年金は主に被扶養女性らが5年間程度受給するような制度でした。
国民年金は始めから65歳から支給なのは60年ほど変わっていないのですね。
厚生年金の変化
これに対して厚生年金の支給は55歳からでしたが、昭和32年から4年に1歳ずつ16年かけて引き上げられました。(ゆっくり引き上げていったのですね。)
女性の厚生年金の支給は昭和62年から12年かけて55歳から60歳に引き上げられました。
(男性よりかなり後からですね。)
平成25年から男性は12年かけて、女性は平成30年から12年かけて、60歳から65歳に引き上げられ現在になります。
国民年金の変化
1961年から国民年金制度が導入されました。
1986年から基礎年金制度が創設され基礎年金制度で専業主婦の国民年金制度への強制適用が始まりました。
1991年には学生も強制加入になります。
出典
こうやって定年制と年金の歴史を見ていくと、厚生年金の支給が引き上げられると共に定年も引き上げられていったのですね。
急に変わると国民も大変ですから改定してから期間をおいたり、16年かけたりしてます。
そんな風になっていたのかと今さらながら、思い返したりしています。
この流れからして2025年から65歳定年義務化説は何故騒がれたのでしょうか?
実は公務員は、2023年から2031年に9年かけて65歳定年になるのが決定しているのです。
公務員の定年の引上げは決定している
令和3年6月11日に国家公務員法等の一部を改正する法律の概要が公布されました。
令和5年から2年ごとに定年を段階的に引き上げて65歳とします。
西暦だと、2023年から開始されて2031年には定年が完全に65歳になるのです。
これは、今までの流れだと、今は「65歳までの雇用確保措置」や「70歳までの就業確保措置」と民間に言っていますが、はっきりと65歳定年制を決定していません。
何だか、10年後はどうなるのかが不安ですね。
いずれ公務員の流れを目指すように仕向けられるのでしょうか?
75歳までの年金受取りも何だか全てが繋がりますね。
長寿大国ですが、健康寿命を考えると高齢で働くのは不安もあります。
公務員の定年改正の内容について
公務員の定年改正を把握しておくのは今後、このように民間も変わって行くかもしれないとの参考になるかも知れません。
生年月日で考えてみた場合
・1963年4月1日以前…定年延長の影響なし(60歳で定年)
・1963年4月2日~1964年4月1日…61歳で定年
・1964年4月2日~1965年4月1日…62歳で定年
・1965年4月2日~1966年4月1日…63歳で定年
・1966年4月2日~1967年4月1日…64歳で定年
・1967年4月2日以降…65歳で定年
これ以降は毎年4月2日以降65歳で定年になります。
定年延長で改正される事
- 役職定年制の導入
- 60歳以降の給与は、60歳時点の7割
- 40歳~50歳代を中心に給与水準を下げる
- 人事評価制度を徹底
- 多様な働き方の導入
70歳までの就業確保措置が民間に推奨されていますが、公務員も同じような展開になるのかも知れませんね。
しかし、勤務時間も選択できるようですが、そんなに高齢で元気で働けるものなのでしょうか?
今回は「なぜ働かないおじさんを福祉的に雇用しないといけないのか?」という人事部の本音のコラムを読んで定年制度について調べてみました。
複雑な事情が絡み合っていることが少し理解出来ました。
65歳定年義務化の情報を聞きつけて担当社労士に問い合わせがあっているようです。
結局今はなっていませんし公務員も定年延長とはいえ60歳以降は定年まで責任職などから離れるようになっています。
どうなっていくのかは見守るしかないのでしょうか?
年金支給までの生活費の確保のためのような制度になってきていますね。
今後の個人的な取り組み
今回の改正について調べたのは事業主の方や、定年が迫っている方が多かったのではないでしょうか?
事業主の方は早めに定年該当者の方に希望を尋ねておき、人員配置や新規採用などの検討も視野にいれて取り組んでいくしかありません。
希望者が全員65歳まで働けるのは、希望者にとっては職場に残りやすいし、後2年くらい働きたいとか、パートタイムでも慣れたところが良いなどとメリットもあるかもしれません。
大きな会社なら仕事内容の種類も多いので年齢に合わせた働きやすい居場所も見つかるかも知れませんが、中小企業ならそのような事も厳しく、希望も出しにくいと考えられます。

個人的な準備
①自分自身で今の仕事で何歳くらいまで仕事が出来るのか、身体や能力を見極めておく。
②親の介護問題も家族で話し合っておく。(親の介護が原因で退職する方が多いが、サービスを使って働いた方が良い場合もある)
③年金をもらえるまでの予算やその後の生活設計を早めにたてておく。
④いつも柔軟な考えで対応策を考える。(今後も改正されそうです)
働く側からしたら、60歳で退職金をもらって次のやりたい事や、のんびりする期間をとっても自由です。
しかし70歳までの就業確保措置と聞いて、ため息が出るのが本音です、国から「元気な人は、頑張って働いて下さいね」と言われている気分です。
その職場の確保を企業に投げている印象ですので福祉的雇用と呼ばれたのではないでしょうか?
年金をもらえる日が、平均寿命が伸びると共に遠ざかって行きます。
定年後も楽しい人生にしたいものです。
「定年後に偉そうな態度は家庭でも職場でも失敗する」のコラムはこちらです。
まとめ
元気でいつまでも社会と関わって行くのは楽しいと思いますが、若い時は同時に3つぐらいの事が出来ていても50代後半になるとそうは行きません。
老眼もひどくなりますから、物を探す時間も増えて仕事もはかどらないようになっていきます。(経験者は語る)
人生100年時代の未来はどうなるのでしょうね。